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東京地方裁判所 昭和53年(ワ)3259号 判決

原告

高尾猶行

被告

右代表者法務大臣

奥野誠亮

右指定代理人

深沢晃

外三名

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実《省略》

理由

一請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二請求原因2について

1  (一)について

抗弁事実のうち、原告が、昭和四九年八月ごろ、(一)の事実に基づく損害賠償請求訴訟を提起し、昭和五一年四月一二日右訴を取下げたことは当事者間に争いがない。そうすれば、原告は昭和四九年八月ごろには、損害及び加害者を知つていたものと認めるのが相当である。被告が本訴において、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効を援用していることは当裁判所に顕著である。

以上によれば、仮に(一)の事実が認められても、これを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は、昭和四九年八月から三年を経過した昭和五二年八月ごろには時効消滅していることになるから、(一)の事実を理由とする原告の請求は理由がない。

2  (二)について

(二)の事実のうち、原告が昭和五二年七月一五日、原告主張のとおり、大阪地方裁判所への出廷連行願を出したこと、Aが昭和五二年八月四日、原告を大阪地方裁判所へ出廷させなかつたことは当事者間に争いがない。

判旨右の出廷させなかつたことが違法であるか否かについて検討するに、〈証拠〉によれば、法務省矯正局長通達「収容者提起にかかる訴訟の取扱いについて」に「収容者の出廷については、具体的事案における出廷の必要の程度及び出廷の拘禁に及ぼす影響の程度等を勘案し施設長の裁量によりその許否を決すること。」と定められていること、原告は、出廷の必要性について、具体的に疎明することをせず、ただ、「大阪の病院のことだ。」と述べるのみであつたこと、そのためAは原告の出廷の必要性の判断をなし得ず、原告の東京拘置所に入所してからの期間の短いこと及び出廷に伴う戒護上の問題を考慮して、原告を出廷させなかつたものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。

右事実によれば、Aが原告を出廷させなかつたことは、相当な措置であると認められ、何ら違法ではないから、(二)の事実を理由とする原告の請求は理由がない。

3  (三)について

(三)前段の事実については、原告本人は、これに沿う供述をしているが、右供述は、証人Bの一〇月三日の期日は公判期日の予定日として原告に告知したにすぎないとの証言に照らし、たやすく信用することができず、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。

よつて、(三)の事実を理由とする原告の請求は理由がない。

4  (四)について

(一)  (四)の第一段事実のうち、原告が原告主張の懲罰執行停止の要求をしていたこと、昭和五二年一二月二六日原告に対し懲罰が執行されたこと、同日から翌日にかけて原告が保護房に収容されたことは当事者間に争いがない。

判旨〈証拠〉によれば、訴訟上の防禦権行使のため、懲罰執行停止の願い出がなされた場合、東京拘置所においては、所長が執行停止を必要とする理由について、当該事件の進行状況、次回期日までの日数、提出すべき文書の有無等の諸般の状況と執行すべき懲罰処分の残日数を比較検討した上、懲罰執行停止して訴訟の準備をさせる必要性及び緊急性があると判断すれば、監獄法第六二条一項の「其他特別ノ事情アルトキ」にあたるものとして懲罰の執行を停止するという取扱いがなされていること、ただし、執行を停止すべきであると認めた理由になる行為が一日四時間以内の執行停止で可能であると考えられる場合には、執行停止をせず、一日四時間を限度として公判準備その他の防禦権行使に必要な行為を行わせるという取扱いであることが認められ、右認定に反する証拠はない。右取扱いそのものが、懲罰を受けている拘置所収容者の訴訟準備等を違法に妨害するものであるとは、本件全証拠をもつてしても認め難く、このことは、東京拘置所以外の同種の施設が東京拘置所と異なる取扱いをしているとしても、左右されるものではない。

〈証拠〉によれば、昭和五二年一二月一五日Aが原告を軽屏禁・文書図画閲読禁止各一五日の懲罰に処したこと、その理由が原告の昭和五二年一一月三〇日の東京地方裁判所刑事第三一二号法廷における職員暴行であること、昭和五二年一二月二六日は右懲罰の執行はなされたものの、原告主張の懲罰執行停止の願い出(一二月二〇日、二一日、二二日付)により、同日から同月二九日まで毎日運用上の執行停止四時間、同月三〇日から昭和五三年一月三日まで五日間の執行停止がなされることになつたこと、ところが、原告がさらに昭和五二年一二月二七日付で懲罰執行停止願い出を行つたため、同日から昭和五三年三月一九日まで二四日間懲罰執行が停止されたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はなく、〈証拠〉によれば、右懲罰の執行停止は前記認定の東京拘置所の取扱いに従つてなされたものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。

判旨右事実によれば、東京拘置所における懲罰執行停止に関する前記取扱いそのものが違法とは認められない以上、その取扱いに際して、Aが行つた判断、すなわち、裁判準備等の必要性及び緊急性の存否、程度についての判断が不合理であるという特段の事情のある場合を除けば、昭和五二年一二月二六日原告に対し懲罰の全日執行停止をなさず、四時間の運用上の執行停止という取扱いをしたことは、何ら違法ではないことになる。

そこで、右Aの判断(裁判準備の必要性及び緊急性の判断)について検討するに、本件全証拠によるも右Aの判断が合理性を欠くものであるとは認められず、かえつて、〈証拠〉によれば、原告に対する前記軽屏禁・文書図画閲読禁止各一五日の懲罰について、その執行が終了したのは、昭和五三年四月一三日であり、その間、執行がなされたのは、昭和五二年一二月二六日、昭和五三年三月一日から三日、同年四月三日から一三日であり、執行のなされた日も、一日四時間の運用上の執行停止がなされたこと、原告に対する懲罰の執行は他に比して遅れがちであつたこと、懲罰の執行中であれば、そうでない場合よりも、裁判準備等ができないのは、拘置所の秩序維持のための懲罰という性格上ある程度は止むを得ないものであることが認められ、右事実によれば、Aの判断は一応の合理性をもつものであつたと言わざるを得ない。

(二)  原告が昭和五二年一二月二六日から二七日にかけて保護房に収容されたことは当事者間に争いがないが、〈証拠〉によれば、右保護房収容は、懲罰執行言渡に際し、原告が興奮し、職員に暴行をはたらくなどしたため止むを得ずとられた措置であり、違法性を有するものとは言えない。

前記懲罰執行の開始日である昭和五二年一二月一五日に医師の診断により「執行差支えなし」とされたことは、前掲乙第一号証により明らかである。

(三)  以上によれば、(四)の事実を理由とする原告の請求は理由がない。

なお、原告は、一日四時間の執行停止の時間帯に食事時間が含まれるので、裁判準備等が妨害されると主張するが、証人Aの証言によれば、右四時間の中に食事時間が含まれることも考慮した上で、運用上の執行停止の許否の判断がなされるものであることが認められるから、この点の原告の主張も失当である。

5  (五)について

(五)前段の事実のうち、昭和五三年三月三日B看守長ら東京拘置所の職員が懲罰執行のため原告の舎房に行つたこと、原告が懲罰執行に抗議したことは当事者間に争いがない。

〈証拠〉によれば、同日正午に運用上の執行停止の時間が切れるため、B看守長、C副看守長らが原告にその旨告知し、執行停止中に房内に所持させていた筆記用具、用紙、小机等を房外に搬出しようとしたところ、原告が、裁判準備の必要があることを理由にこれを拒否したため、Bの命令でC副看守長が自ら搬出しようとしたところ、原告が右Cの顔面を左手挙で殴りつけ、右Bの下腹部を足で蹴る等の暴行をなしたので、職員数人が右暴行を制圧したこと、原告は右C、Bに対し暴行をした際、勢い余つて、房内から、三〇センチぐらい低くなつているコンクリートの廊下に仰向けにひつくりかえり、頭、腰等を打撲したこと、その後原告は保護房に収容されたことが認められる。原告本人は、この点について、原告主張に沿う供述をしているが、右認定した事実に照らし、たやすく信用できず、他に請求原因2(五)前段の事実を認めるに足りる証拠はない。

なお、仮に、拘置所職員が原告の暴行を制圧する際に、多少の有形力の行使をなしたとしても、前掲各証拠及び前記認定の事実によれば、原告の暴行の制圧のため、やむを得ないものであると認められ、違法なものとは言えない。

以上によれば、(五)の前段の事実を理由とする原告の請求は理由がない。

6  (六)について

5の各証拠及び5で認定した事実によれば、原告には、同日、指示違反・職員暴行の規律違反行為があつたものと認められ、C副看守長が内容虚偽の報告書を作成し、原告に対し、懲罰を執行したという事実はこれを認めるに足りない。

よつて、この点を理由とする請求は理由がない。

7  (七)について

(七)の事実のうち、原告が情願認書の願い出をなし、昭和五三年三月六日所定の用紙の交付を受けたこと、同月一六日右用紙を引き上げられたことは当事者間に争いがない。

判旨〈証拠〉によれば、矯正局長通達「法務大臣に対する情願の取扱いについて」の「記」三情願書の作成期間という部分において、「情願書の作成期間は、七日以内とする。ただし、作成の期間が全体を通じて十日を超えない範囲内において、これを延長することができる。」と定められていること、東京拘置所においても、右の定めのとおり運用されていることが認められ、収容者の情願作成の期間を一〇日以内に制限している右の定めは、収容者という性格から、無制限に情願を許すことは相当でないとの合理的な判断に基づくものと解されるところ、原告が情願作成のための用紙の交付を受けたのは前記のとおり、昭和五三年三月六日で、原告が右用紙を引き上げられたのは同月一六日であるから、右通達の定める最大限の一〇日間、原告が情願作成の期間を与えられたことは明らかであるから、Aが原告の情願を妨害したと言えないこともまた明らかである。

よつて、この点を理由とする原告の請求は理由がない。

8  (八)について

原告が原告主張の懲罰執行停止の願い出をしたことは当事者間に争いがないが、〈証拠〉によれば、原告の右願い出により、同年三月三一日から四月二日までの三日間懲罰の執行が停止されていることが認められ、懲罰執行停止がなされなかつたとする原告の主張が失当であることは明らかである。

9  (九)の事実について

(九)の事実のうち、原告が原告主張の懲罰執行停止の要求をしたことは当事者間に争いがない。

〈証拠〉によれば、右の要求により、昭和五三年三月三一日から四月二日まで懲罰の執行が停止され、同月三日から一三日まで執行はなされたものの、一日四時間の運用上の執行停止がなされたことが認められ、右認定に反する証拠はない。右取扱いについては、その取扱いそのものが違法であるとは言えないことは、前記4のとおりであり、本件全証拠によるも、懲罰執行を停止して裁判準備をさせる必要性及び緊急性に関するAの判断が不合理なものであつたとは認められないので、(九)の事実を理由とする原告の請求は理由がない。

10  (一〇)について

(一〇)の事実のうち、Aが昭和五三年五月六日原告の舎房から情願書を引き上げたことは当事者間に争いがない。

〈証拠〉によれば、原告が右情願作成を開始したのは、同年四月二五日であると認められ、7のとおり、情願作成期間は最大限一〇日であるから、情願作成期間は同年四月四日までとなることは明らかであるから、同月六日作成期間のすぎた情願書を原告の舎房から引き上げることは何ら違法ではないものと考えられる。

11  (一一)について

(一一)の事実のうち、Aが原告主張の各口頭弁論期日に原告を出廷させなかつたことは当事者間に争いがない。

右各期日のうち、本件の昭和五三年六月五日の口頭弁論期日は変更され、同年八月二一日と指定され、右期日が実質上第一回口頭弁論期日であること、同日原告提出の訴状、訴拡張申立書、準備書面が民事訴訟法第一三八条により陳述を擬制されたことは当裁判所に顕著であり、右事実及び弁論の全趣旨によれば、原告が提起した他の二件の各期日も第一回口頭弁論期日(延期ないし変更された実質上の第一回口頭弁論期日を含む。)であることが認められ、右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

判旨そこで、原告提起にかかる訴訟の第一回口頭弁論期日に原告を出廷させなかつたことが違法であるか否かにつき検討するに、第一回口頭弁論期日においては、民事訴訟法第一三八条の適用により訴状その他の準備書面が陳述を擬制されることがあることは明らかであり、そのため、その限度において原告本人が出頭する必要性が続行期日におけるよりも少いことも明らかであるところ、原告が未決拘禁者であること(当事者間に争いがない。)及び原告本人の出廷については数人の拘置所職員が戒護のために必要とされること(当裁判所に顕著である。)を考慮すれば、東京拘置所の右取扱いが違法であるとは断じ難い。

そうすれば、この点を理由とする原告の請求は理由がない。

12  (一二)について

(一二)の事実のうち、昭和五三年六月六日に原告が拘置所外の村岡昇に発信した書面の一部を抹消したことは当事者間に争いがない。

〈証拠〉によれば、東京拘置所の所内生活の心得第二、十二には、施設の規律及び管理運営上重大な支障がある内容の封書、はがき及び電報については、その一部を抹消することがある旨定められていることが認められ、〈証拠〉によれ判旨ば、原告が発送しようとした書面の記載のうち、抹消されたのは、看守等の職員の氏名、勤務箇所、原告の呼称番号、舎房番号であることが認められる。

右抹消された部分が、外部に漏れることによつて、拘置所の管理運営に重大な支障を及ぼすおそれのあることは容易に想像し得るところであるから、前記所内生活の心得第二、十二により抹消したことは違法なものとは言えない。それが、たとえ、裁判所に提出する書証のコピーを依頼するために発送しようとしたものであるとしても、拘置所の管理運営に対する影響は、その他の書面と異ならず、また、原告がことさら書証のコピーを拘置所外の者に依頼すべき必然性も全くないと考えられるから同様である。

よつて、この点を理由とする原告の請求は理由がない。

13  (一三)について

〈証拠〉によれば、昭和五三年六月一七日には、懲罰の運用上の執行停止がなされていることが認められ、東京拘置所においては、右執行停止は午前八時から正午まで(この点は、実質上の時間の点は別として、当事者間に争いがない。)の間に行われるのであるから、同日午前八時から正午までは、懲罰の運用上の執行停止がなされたことになるのであつて、これに反する事実を前提とする原告の主張は理由がない。

14  (一四)について

(一四)の事実のうち、Aが原告に鉛筆の使用を許可しなかつたことは当事者間に争いがないが、原告本人尋問の結果及び弁判旨論の全趣旨によれば、原告は、ボールペンの使用をして、訴訟に関する書類その他を作成していることが認められるのであつて、鉛筆の使用を許可されなかつたとしても、これにより、原告が法律上賠償さるべき損害を受けたものとは認められない。

よつて、(一四)の事実を理由とする請求は理由がない。

15  (一五)の事実について

(一五)の事実のうち、原告がその主張の懲罰執行停止願いを出したこと、昭和五三年七月一日から四日まで原告が保護房に収容されたことは当事者間に争いがない。

〈証拠〉によれば、前記5で認定した東京拘置所職員に対する暴行及び指示違反を理由として昭和五三年六月八日Aが原告を軽屏禁・文書図画閲読禁止各一〇日の懲罰に処したこと、同年七月一日から五日まで右懲罰の執行がなされたこと、しかし、原告の同年六月二三日付の懲罰執行停止願により、一日四時間の運用上の執行停止がなされることになつていたこと、原告が同年七月一日規律違反行為をなしたため同日から同年七月四日まで保護房に収容されたこと、同月六日から同月一三日まで執行が全日停止されたことが認められ右認定を左右するに足りる証拠はない。

懲罰の執行停止についての東京拘置所の取扱いが違法であるとは言えぬことは前記4のとおりであり、本件全証拠によつても、右認定の懲罰の執行停止及び運用上の執行停止について、裁判準備等の必要性及び緊急性に関するAの判断が不合理なものであると認めるに足りず、保護房収容については、〈証拠〉によれば、原告が規律違反行為をなし、普通房に収容できない状態であつたことが認められるのであるから、止むを得ない処置であつたと認めざるを得ない。

右事実によれば、この点を理由とする原告の請求は理由がない。

なお、〈証拠〉によれば、昭和五三年六月八日原告に対し懲罰を執行するに際し、「執行差支えなし」との医師の診断がなされたことが明らかであり、この点の原告の主張も失当である。

16  (一六)について

「期間更新は認められない 新たな情願作成については許可」との部分は弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められ、その余の部分は〈証拠〉によれば、原告が昭和五三年七月六日情願書作成許可願という所定の用紙を用いてなしたのは、すでに作成開始後一〇日を経過した情願についての作成期間の延長の許可願であつたこと、その願い出が、「期間更新は認められない」という理由で不許可になつたこと、新たな情願作成の願い出であれば許可されること、原告が同月二九日に新たな情願書作成許可願を提出したところ許可されたこと(この点は当事者間に争いがない。)が認められ、右事実によれば、情願書作成期間延長許可願という形式によらず、新たな情願書作成許可願という形式で願い出をすれば直ちに許可されることが明らかであり、原告が原告の主張する期間情願をなし得なかつたのは、原告がことさらに作成期間延長許可願という形式をとつたためであつて、同年七月六日の情願書作成期間延長許可願を不許可にしたことが原告の情願権を侵害する違法なものであるとは到底認め難い。

よつて、この点を理由とする原告の請求は理由がない。

17  (一七)について

(一七)の事実のうち、Aが原告に、懲罰執行中の戸外運動は六日目に一回と告知したこと、昭和五三年七月六日原告に戸外運動をさせなかつたことは当事者間に争判旨いがないが、〈証拠〉によれば、東京拘置所の取扱いとして、懲罰中の戸外運動は六日目ごとに実施していること、ただし、六日目が入浴日であるときは、入浴を優先させてその翌日に戸外運動を実施していること、昭和五三年七月六日が原告の入浴日であつたことが認められる。本件全証拠によつても、東京拘置所の右取扱いが原告に精神的・肉体的苦痛を与える違法なものであるとは到底認め難いので、(一七)の事実を理由とする原告の請求は理由がない。

18  (一八)の事実について

(一八)の事実のうち、原告がその主張の懲罰執行停止願い出をしたこと、昭和五四年三月一六日から同年四月二八日まで原告に対する懲罰が執行されたことは当事者間に争いがない。

〈証拠〉によれば、昭和五四年三月一五日Aが原告の指示違反、暴言及び傷害の規律違反行為につき、軽屏禁・文書図画閲読禁止各三〇日の懲罰に処すことに決定したこと、右懲罰執行の間に原告から出された前記執行停止願により、同年三月一七日から同月三〇日まで、同年四月七日から同月一六日まで及び同月二四日から同月二八日までの間、懲罰執行各一日につき四時間にわたり懲罰の運用上の執行停止がなされたこと、同年三月三一日から同年四月六日まで及び同年四月一七日から同月二三日まで懲罰執行が停止されたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

東京拘置所における懲罰執行停止及びその運用上の執行停止の取扱いが違法であるとは言えないことは、前記4のとおりであり、本件全証拠によるも右認定の懲罰執行及びその運用上の執行停止について、裁判準備の必要性及び緊急性に関するAの判断が不合理なものであるとは認められない。

以上によれば、(一八)の事実を理由とする原告の請求は理由がない。

三以上によれば、その余の判断をなすまでもなく、原告の本訴請求は、いずれも理由がないから、棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(牧野利秋 関野杜滋子 野尻純夫)

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